チケットがプレミア化して久しいラーメンズのチケットをひょんなことからゲットして、神戸までライブを見て来た。開場時間に劇場に辿りつくとそこは長蛇の列。列の最後尾をどうにか探り当て並び待つこと十数分。ようやく入場できた。劇場内でも外とよろしく長蛇の列。せまい劇場内でのことでより大変だ。皆が皆、パンフやDVDを買うために並んでいた。喧騒を省みず自分の席へと向かう。前から四列目のかなりの良席。期待に胸高鳴りつつ開演を待った。定刻を五分ほど遅れて暗転。そしてスポットライトが差し込み、黒の何の衒いもない上下の出で立ちで、ラーメンズの二人が登場した。
内容を具体的に書いてしまうとネタバレになってしまうので控えるけれども、一つのコントが次のコントへの伏線となり、その次のコントがそれまでのコントの伏線を回収しつつ、さらに新しい伏線を張り巡らすという、超テクニカルな構成。そして、その内部では二つの別々のシチュエーションが、一つの言葉によって進行して行くなどの様々な仕掛けが盛り込まれ、渾然一体となりつつも破綻をまったく来たさないという、非現実的なまでの完成度の高さに度肝を抜かれた。最後のコントでは、それまでのコントを纏め上げ、さらには可笑しいことと悲しいこととが、その実は近接しており、どこかで通低していることまでもを示唆しつつ、鮮やかな幕引き。完全に完成されたところからの限界突破。ラーメンズにはそれができた。できてしまった。
かつて天才立川談志は「あらゆる芸事はそれを極めると、なにがなんだかわからないものにまでなる。そしてそこに残されるものは芸事のもつ凄みだけだ」と言い、その状況や状態を「イリュージョン」と規定し名付けたけれども、ラーメンズの二人によって細部にまで管理され支配されたこの世界と観客が共有したこの二時間はイリュージョン以外の何物でもなかった。この時代に生まれた笑いの一つの可能性として、必見。