ブログ ぱりてきさすのトレード日記: 不道徳教育

2006年04月04日

不道徳教育




あまりに鬱なので書評をば・・・


一般に翻訳本の質は訳者の力量に依るところが大きく、グリーンスパンの回顧録を山形浩生が訳出するそうでありがたいかぎりです。そしてこの「不道徳教育」も橘玲による訳出でなければこんなにも面白い本にはならなかっただろう。氏の超訳によってアメリカで30年前に出版されたこの本が現代の日本に鮮やかに蘇っている。

この本の核にある思想は「リバタリアニズム」だ。それは言ってしまえば、神の見えざる手をどこまでも信じる政治思想である。著者のブロック教授は頭にターバンがよく似合いそうな勢いのガチガチの市場原理主義者であり、彼の主張には一切の譲歩も妥協も見つからない。そのガチガチに凝り固まったアタマで、「擁護できないものを擁護する」のだ。

売春婦から女性差別者に悪徳警官にニセ札作りに2ちゃんねらーにホリエモン。果ては満員の映画館で「火事だ!」と叫ぶ奴までをも徹底的に擁護して行く。それも巷に溢れる人権派弁護士のように情に逃げるのではなく、あくまでロジックとレトリックのみで論陣を張って行くので痛快である。そして、そこで結果的に炙り出されてくるものは「自由」と「市場」の正体であり、これまで至高の価値があるとされてきた「自由」やもっとも効率的な「市場」を敷衍しようとするとき、論理的にはその延長に待ち構えるハチャメチャな世界をも追認せざるを得ないという難問についてである。

これらの問題に唯一絶対の解なんてモノは存在せず、その解に近いものはブロック教授が意図的に排した「譲歩」や「妥協」の中にあるんだろうね。逆説的に読み解くことでいろんなことがつまびらかになるよね。「市場主義」「小さな政府」路線へと大きく舵を切った今の日本には、30年前に書かれたこの本の問題提議はまったく古びることがないよね。とまぁそういうお話。




posted by ぱりてきさす at 22:04| Comment(2) | TrackBack(1) | 書評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
論理的思考はいかん!という本も出る中(新しいところだと国家の品格等)論理的思考のみってのも面白い話ですな。積読が溜まっていく・・・
Posted by 三空 at 2006年04月04日 23:47
智に働けば角が立つ。情に竿されば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい。ベンベン
Posted by 巴里、テキサス at 2006年04月05日 01:57
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Tracked: 2006-04-20 22:40
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