週末にこつこつとFXの基礎研究をしていたら後輩から電話がかかってきて今から金を買いに行くのだという。というのも、この後輩は今年から社会人になって日中の株の売買ができないけれども、資産の運用はしたいってことだったので、少し前に金投資を勧めていた。一通り金に関する基本的なレクチャー(消費税丸儲け術やドルの供給量のヘブンや中国の金準備高の増大やIMF放出でも値持ちが良いこと)をして、最後にお勧め本としてジェームズ・タークのドル崩壊と資産の運用を教えていたんだけども、どうやらこの本を読んだら金が買いたくて買いたくて仕事が手に付かなくなったんだって。(僕の周りの人でこの本を読んだ人はみんな金を買い出してる) というわけで僕もフィールドワークをかねて一緒に三菱マテリアルのお店に行ってきた。
お店で店の人と色々話したのだけども、やっぱり3000円を超えてくると売りに回る個人客が多いんだって。後輩の売買の手続きをしながら店の在庫の金貨についてもいろいろ聞いたりしたんだけども、ウィーン金貨なんかも在庫が今は潤沢にあるのだそうな。ふむふむ、なるほど。そうこうしていたら後輩は20gの地金を2枚購入。あれれ、お前電話では1枚だけ買うつもりだと言っていたのに。どういうこった。
OAPのやぶそばでそばを待ちつつ、錦袋から取り出した地金はさっきから陽に反射していてずっとキラキラだ。思い出したように後輩に今日地金を2枚買った真相を尋ねたら、母の日に母へプレゼントするのだという。なんて殊勝なんだと少し感動していたら、これで懐柔して母が貯め込んだお金を引き出すのが最終目的とのこと。なんたるゲス野郎。感動を今すぐ返せ。でも、眺めるフォーナインの地金は本当に美しい。なんだか取り込まれてしまいそうだ。彼の母親が同じように取り込まれないことを祈るばかりだけども、人類の歴史の中で価値が一度として揺らぐことのなかった金が放つこの鈍い輝きは人の心を存分に惑わしうるものだと思う。もしかしたら、この地金の一部にはピラミッドから盗掘された金冠の一部やインカの奪われた聖杯の一部が混ざっているんではなかろうかなどといった陳腐なロマンにだって思いを馳せてしまうのがその証拠だ。現実の世界にきちんと引き戻してくれたのは、後輩のゲス発言とやぶそばのそばの値段だった。
+5